AI駆動開発の実運用ノート

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配布資料 29構築年表 総覧 — 9ヶ月で何がいつ起きたか

構築年表は5章に分かれています。ドキュメント、大規模変更、規律、実装、運用。 それぞれ独立して読めるように書いたので、章をまたぐと時間の流れが見えにくくなります。

そこでこのページに、5章ぶんの出来事を1本の時間軸に並べ直しました。 全体の流れを先に掴んでから、気になる章に降りていってください。

日付はすべて題材プロジェクトの git 履歴・イシュートラッカー・memory の実測です。

5章の地図

扱うもの 主に出てくる時期
第1章 ドキュメント駆動の歩み 文書がどう生まれ、腐り、仕組みで守られたか 2025-10 〜 2026-07
第2章 大規模仕様変更の実像 事業転換・返金再設計・マルチテナント化ほか5件 2026-03 〜 2026-07
第3章 規律の共進化 CLAUDE.md・rules・hooks の育ち方 2026-03 〜 2026-07
第4章 実装期のイテレーション 開発フロー20ステップと検証規律の形成 2026-03 〜 2026-07
第5章 運用成熟期の自動化 デプロイフロー4世代・監視・自己修復・DR 2026-03 〜 2026-07

4つの局面

9ヶ月は、大きく4つの局面に分かれます。

序章(2025-10 〜 2025-12)。 別サービスを試作しながら「そもそも何を作るか」を探していた時期です。一度は全面作り直しをしています。ただし初回コミットの時点で計画文書9本が同梱されていて、コードより先に文書という姿勢は初日から一貫しています。

沈黙(2025-12 〜 2026-03)。 コミットが約2.4ヶ月まったく止まります。リポジトリの外で要件定義を書き切っていた期間です。グラフ上は完全な空白ですが、ここがその後の速度を買いました。

実装期(2026-03 〜 2026-05)。 9分間で要件57本が入り、3日後に実装が始まります。ここで開発フローの骨格と、検証の規律と、最初の hook が生まれます。事故もこの時期に集中しています。

成熟期(2026-05 〜 2026-07)。 大規模な仕様変更、全数監査、デプロイの無人化、災害復旧のリハーサル。規律が「作業の規律」から「人間と AI の権限関係の統治」へ移っていきます。


年表

序章 — 2025年10月〜12月

日付 出来事
2025-10-15 初回コミット。事業計画書・要件仕様書・システム設計書など計画文書9本を同梱 1
2025-12-23 序章の試作、最終コミット。ここからコミットが途絶える 1

沈黙 — 2025年12月〜2026年3月

日付 出来事
〜2026-03-03 約2.4ヶ月、コミットがゼロ。 リポジトリ外で要件定義を執筆 1

実装期 — 2026年3月

日付 出来事
03-04 9分間の3コミットで約100文書を一括インポート(機能別要件57本・設計11本・画面設計9本・AI リサーチ2本) 1
03-04 CLAUDE.md 初追加(15行)。 事業転換コミットに同梱された散文メモ 3
03-06 外部サービス文書9本。ワイヤーフレーム129枚(約29,000行)を一括追加してデザインの正本を確定 1
03-07 実装開始。 Phase 0 完了、以降3日で Phase 1〜12 1
03-10 イシュートラッカー導入。 イシュー駆動運用が始まる 1
03-10 初代デプロイ CI 誕生(staging / production ワークフロー) 5
03-11 テスト文書カテゴリが誕生(実装開始の直後) 1
03-16 環境構築カテゴリが誕生(staging 構築期) 1
3月中 検証の是正 第1段階「ふりの排除」。 実装開始2週間で同じ日に3件 4
03-30 staging 実機を構築。 デプロイ G2(スクリプト化 + 完了マーカー)へ 5
03-30 Prometheus + Grafana を compose 同居で導入 5
3月末 CLAUDE.md が477行に肥大(ピーク)。hooks はまだ0本 3

規律が生まれる — 2026年4月

日付 出来事
04-02 CLAUDE.md 大凝縮(504行 → 47行)。 詳細を .claude/rules/ 7本へ分散 3
04-02 初代デプロイ CI を完全停止workflows-disabled/ へ隔離(削除せず遺構として保存) 5
04-05 開発フローに「まず dev、それから staging」の2段検証と、失敗時の即時修正イテレーションを追加 4
04-06 最初の hook が生まれる。 マージ事故で消えたコード468行を復元する、その PR の中で 3
04-07 スカッシュマージ禁止を明文化。開発フロー20ステップが確定 3, 4
04-16 Done は staging ブラウザテスト完了後のみに限定 4
04-22 任意バッチデプロイを初導入(同一 epic・5タスク以内の厳格条件つき) 4
04-29 「無限待機・非完了」事故を受けてデプロイ G3(非同期起動 + watchdog + 状態ポーリング) 5
4月末 hooks 7本(ブラウザテスト強制・マージ手順・テスト skip 検知・Done ガード) 3

深さを強制する — 2026年5月

日付 出来事
5月第1週 並列エージェントの衝突と「全要件実装」の欠落。自己申告を信じない検収の型が確立 4
05-03 バックアップのサイレント失敗(1回目)。 実行権限漏れで全期間失敗 → 同日に鮮度監視スクリプトを新設 5
5月中 検証の是正 第2段階「深さの強制」。「ステージングでブラウザテストした?」で3件差し戻し。価値到達点の定義が生まれる 4
5月中 E2E ランナーが「471 passed」と偽って正常終了。「このコマンドは実行しない」という結論へ 4
05-09 法務カテゴリ誕生 1
05-14 ホワイトラベルカテゴリ誕生。マルチテナント化の設計 exploration(確定事項20項目)を1日で作成 1, 2
05-15 返金カテゴリ誕生。返金設計で AI の案を8回却下し、絶対禁止事項リストを同日に rules 化 1, 2
05-21 バックアップの19日間サイレント失敗が発覚。 鮮度監視スクリプト自体が本番未配備だった 5
05-30 リファクタリングカテゴリ誕生 1
5月末 hooks 11本(言行一致・デプロイ監視・記憶インフラ) 3

較正と全数監査 — 2026年6月

日付 出来事
6月中 検証の是正 第3段階「過剰の較正」。 規律を厳しくしすぎた副作用を緩める方向に直す 4
06-02 体系外に散乱した7ディレクトリを正規体系へ吸収 1
6月中 バグ1件から全数監査へ拡張。18クラスタ並列監査で173件を検出(inline style 7,868箇所を含む) 2
06-27 デプロイ CI 再誕(CI でビルドしてイメージを VPS へ直送する build-ship 方式) 5
06-30 文書の棚卸しで3種類の劣化(散乱・重複衝突・陳腐化の同居)を実測 1
06-30 レプリケーション監視・スタンバイ監視を追加。DR 構築とフェイルオーバーリハーサルを1日で完遂 5
6月末 hooks 17本(出力書式の三層・ロール注入・テーマトークン・禁止 API) 3

統治へ — 2026年7月

日付 出来事
07-01 文書の全面再編(20ディレクトリを日本語名に・重複解消・DR 正本の一本化) 1
07-01 デプロイ G4(CI ビルド先行 + ローカル一括ラッパー)へ 5
07-02 再編の翌日に doc-ownership.tsv と hook 3本を導入。腐らせない仕組みまで作る 1
07-02 バッチデプロイがデフォルト運用へ。「In Review = デプロイ待ちキュー」の意味論が確定 4, 5
07-12 CPU steal アラートを同日中にコードで実装 → staging で導通実証まで1セット 5
07-14 push 時の自動フルビルドを撤去(2週間で約80回、無料枠の主消費源だった) 5
07-15 CI 無料枠 2,000分/月が枯渇して全停止。 4時間レートリミット hook を機械化 5
07-16 dev テストのバッチ化を公式化しつつ、per-PR 最低ゲートは必須と境界を固定 4, 5
07-16 営業資料カテゴリ誕生 1
07-17 現在地: 文書 274件・80,654行 / hooks 24本 / CLAUDE.md 179行 / 統治コード 約3,855行 1, 3

この年表から読み取れること

規律は事故のあとにしか生まれませんでした。

hooks の誕生日を追うと、その直前に必ず事故があります。4月6日の最初の1本はマージ事故の復元 PR の中で、7月15日の4時間ガードは無料枠の枯渇の翌日です。 「整備プロジェクト」を立てた日は、9ヶ月で一度もありません。

厚くなったのは検証だけでした。

開発フローは4月7日に20ステップで確定して以降、3ヶ月ほとんど変わっていません。 その間の改訂はすべて検証側の強化です。何を大事にしたのかが、この年表にそのまま出ています。

同じ失敗が形を変えて何度も出てきます。

バックアップのサイレント失敗は2回。SSH 切断の系統は4回。ツール呼び出しの書式ミスは27日かけて三層防御になりました。 一度で直ったものは、ほとんどありません。

数字が伸びたのは、規律を足したあとです。

コミット数は3月の585から6月の1,796へ。同じ期間に完了リードタイムの中央値は0.6時間から5.5時間へ伸びています。 遅くなったのではなく、「完了」の定義が重くなりました。それでも量は落ちていません。